がん検診

婦人科で代表的ながんには、子宮頸がん・子宮体がん・卵巣がんの3種類があります。これらは初期の段階では自覚症状がほとんどなく、気づかないうちに進行してしまうことも少なくありません。

そのため、定期的に検診を受けて早期に発見することがとても重要です。婦人科がんは、早期であればあるほど治療の効果が高く、体への負担も少なく済むといわれています。

子宮と卵巣について

子宮は洋梨を逆さにしたような形をした臓器で、大きさはおおよそ鶏卵ほどです。前方には膀胱、後方には直腸があり、骨盤の中央に位置しています。

子宮の奥には左右1つずつ、合計2つの卵巣があります。卵巣は卵子を育てるだけでなく、女性ホルモンを分泌する大切な役割を担っています。また、子宮は大きく2つの部分に分けられます。膣からつながる入り口側の下3分の1を「子宮頸部」、その上の残り3分の2を「子宮体部」と呼びます。

子宮頸がんとは？

子宮頸がんは、子宮の入り口にあたる「子宮頸部」にできるがんです。子宮がんの中でも約7割を占め、特に20～30代の若い女性に多いことが特徴です。出産回数が多い方では、発症リスクが高くなることも知られています。

主な原因は、HPV(ヒトパピローマウイルス)というウイルスです。HPVは性交渉を通じて男女ともに感染する可能性があり、性交渉の経験がある女性であれば誰でも子宮頸がんにかかるリスクがあります。

一方で、子宮頸がんは検診で早期に発見しやすいがんでもあります。がんになる前には「異形成」と呼ばれる細胞の変化が起こり、この段階であれば子宮頸がん検診(子宮頸部細胞診)で見つけることができます。異形成の段階で発見できれば、がんへ進行する前に治療が可能です。

また、初期の子宮頸がんであれば、子宮を残したまま治療して完治できる場合もあります。早期発見がとても重要ながんのひとつです。

子宮頸がん検診の進め方

子宮頸がん検診は、主に次のような流れで行われます。

❶問診・視診・内診

❷子宮頸部細胞診

この検査では子宮頸部の細胞に異常がないかを確認します。ただし、子宮体部や卵巣の病気までは分からないため、子宮頸がん検診の際には超音波検査を併せて受けることをおすすめします。

超音波検査を組み合わせることで、子宮や卵巣の状態も確認でき、より安心につながります。

子宮頸がんの精密検査

子宮頸部細胞診で「異常の可能性がある細胞」が確認された場合には、さらに詳しく調べるために精密検査を行います。

■精密検査には、主に次の2つがあります。

・コルポスコープ検査(コルポスコピー)：膣から「コルポスコープ」という拡大鏡を挿入し、子宮頸部を詳しく観察する検査です。

・組織診：コルポスコープでの観察の中で異常が疑われる部分があれば、その組織を小さく採取し、詳しく調べます。通常の細胞診よりも深い部分の組織を取るため、わずかにチクっとした痛みを伴うことがありますが、短時間で終わります。

当院でも精密検査を行っておりますので、お気軽にご相談ください。

子宮頸がんの治療

子宮頸がんの治療は、大きく分けて「手術」「放射線治療」「抗がん剤による化学療法」の3つがあります。どの治療を選択するかは、がんの進行度(ステージ)、年齢、持病の有無、そして今後の妊娠希望など、さまざまな要素を考慮して決定されます。

当院では子宮頸がんの治療自体は行っておりませんが、必要な場合には専門的な治療を行う信頼できる医療機関をご紹介いたします。安心してご相談ください。

子宮頸がん検診を受けていただきたい方

子宮頸がん検診は、自治体の補助制度が整っており、多くの場合は無料または低価格で受けることができます。少なくとも2年に1回は、定期的に検診を受けることをおすすめします。

■特に以下のような方は検診を受けておくと安心です。: 20歳以上で、性行為の経験がある方

妊娠や出産の回数が多い方

喫煙習慣のある方(タバコは子宮頸がんの発症リスクを高めます)

HPVワクチンを接種した方(ワクチンを受けても、すべての子宮頸がんを防げるわけではないため、検診が必要です)

子宮体がんについて

子宮体がんは、子宮の内側(子宮内膜)に発生するがんで、「子宮内膜がん」とも呼ばれます。発症の多くは50～60歳代の閉経前後の女性に見られます。

➊エストロゲン(女性ホルモン)の影響で発症するタイプ: 肥満や生理不順のある方に多く、「子宮内膜増殖症」という前がん状態を経て発症することが特徴です。

➋エストロゲンと関係なく発症するタイプ: 比較的高齢の方に多く、高血圧や糖尿病をお持ちの方、また家族に乳がん・大腸がん・子宮体がんの既往がある方でリスクが高いとされています。

子宮体がんの症状

子宮体がんは比較的早い段階から症状が出やすいがんです。最も多いのは不正性器出血で、特に閉経後の出血には注意が必要です。

そのほか次のような症状がみられることもあります。

・尿が出にくい
・性行為のときの痛み
・下腹部の痛み
・お腹の張り

「年齢のせいかな」と思ってしまうこともありますが、気になる症状がある場合は早めに婦人科を受診することが大切です。

子宮体がんの検診

子宮体がんの検診は、子宮内膜の細胞を採取して調べる方法で行います。細い器具を子宮の奥まで挿入し、粘膜の細胞をこすり取って検査します。

子宮頸がん検診のように広く行われるものではなく、医師が必要と判断した場合に実施される検査です。特に閉経後の出血や不正性器出血がある場合には、検査をすすめられることがあります。

子宮体がんの精密検査

子宮内膜細胞診で異常が疑われた場合には、さらに詳しく調べるために精密検査を行います。具体的には、専用の器具を使って子宮内膜の組織を採取し、病理検査で詳しく確認します。

検査の際に軽い痛みを感じることがありますが、正確な診断のために欠かせない大切な検査です。必要と判断された場合には、当院でも実施していますので安心してご相談ください。

子宮体がんの治療法

子宮体がんの治療は、手術が基本となります。通常は子宮だけでなく、卵巣や卵管、必要に応じて周囲のリンパ節も一緒に取り除きます。若い方で妊娠を希望される場合には、ホルモン剤を使った治療が選択されることもありますが、対象となるのはごく初期の一部の子宮体がんに限られます。

診断の時点で進行しており、手術だけで取りきれない場合には、放射線治療や抗がん剤による化学療法を行うこともあります。

当院では子宮体がんの治療は行っていませんが、万が一子宮体がんの可能性がある場合には、患者さんの状況に応じて適切な医療機関をご紹介いたしますのでご安心ください。

子宮体がん検診を受けていただきたい方

次のような条件に当てはまる方は、子宮体がんのリスクがやや高いと考えられています。ご不安な場合は、検診を受けるかどうか医師にご相談ください。

50歳以上の女性

不正出血がある方(特に閉経後の出血は要注意です)

妊娠や出産のご経験がない方

肥満のある方

生理不順が続いている方

初潮が早かった、もしくは閉経が遅かった方

ホルモン補充療法を受けている方

ご家族に乳がん・大腸がん・子宮体がんの既往がある方

卵巣がんについて

卵巣がんは、子宮の左右にひとつずつある卵巣に発生するがんです。卵巣は小さな臓器で、卵管の近くに位置しています。

卵巣がんは「症状が出にくいがん」といわれており、中には20cmほどの大きさになっても自覚症状がなく、気づかないまま進行してしまうこともあります。そのため、早期に発見するのが難しいがんのひとつです。

また、卵巣がんのうち約1割は遺伝的な要因が関係していると考えられています。特にBRCA1遺伝子やBRCA2遺伝子に変異をもつ女性は、卵巣がんだけでなく乳がんのリスクも高まることがわかっています。

卵巣がんの症状

卵巣がんは初期の段階では自覚症状がほとんどないのが特徴です。そのため、気づいたときには病気が進行しているケースも少なくありません。

進行すると、次のような症状がみられることがあります。

・頻尿(トイレが近くなる)
・下腹部のしこりを触れる
・お腹の張りや膨満感
・食欲の低下

また、卵巣の腫瘍が大きくなって根元がねじれる「茎捻転」や、腫瘍が破裂した場合には、突然強い下腹部痛が起こることがあります。こうした場合には、緊急手術が必要となることもあります。

卵巣がんの検査方法

卵巣がんは、子宮頸がんや子宮体がんのように細胞診で簡単に調べられるものではありません。

最初に行うのは問診や内診、超音波検査で卵巣の状態を確認することです。もし卵巣がんの可能性が疑われる場合には、より詳しい検査としてMRIやCTといった画像検査や、血液検査(腫瘍マーカーの測定)を行います。

確定診断は、手術で切除した卵巣や卵管の組織を病理検査で詳しく調べることで行われます。これによって腫瘍が良性か悪性か、悪性であればその種類まで判断することができます。

卵巣がんの治療法

卵巣がんの治療は、手術療法と化学療法(抗がん剤治療)が基本となります。

手術前の検査で良性腫瘍と判断された場合には、卵巣を残して腫瘍だけを取り除く核出手術を行うこともあります。

一方で、がんと診断された場合には、病期(ステージ)や広がりの程度に応じて、子宮・卵巣・卵管・リンパ節などを含めた切除手術を行い、その後に抗がん剤治療を追加することがあります。

当院では卵巣がんの治療は実施していませんが、疑いがある場合には信頼できる専門の医療機関をご紹介いたしますのでご安心ください。

卵巣がん検診を受けていただきたい方

次のような条件に当てはまる方は、卵巣がんのリスクが高いとされています。心配な場合や検診をご希望の方は、当院へご相談ください。

50歳以上の女性

妊娠や出産の経験がない方

肥満のある方

不妊でお悩みの方

排卵誘発剤を使用している方

ご家族に乳がんや卵巣がんの既往がある方

婦人科がん検診におすすめのオプション検査

自治体の補助で受けられる婦人科がん検診は、あくまで「最低限のスクリーニング検査」です。当院では、検査の精度を高め、より安心していただくために次のオプション検査をおすすめしています。

HPV検査(ヒトパピローマウィルス検査)

子宮頸がんの多くはHPVウイルス感染が原因とされています。通常の子宮頸がん検診は細胞診(細胞を顕微鏡で観察)ですが、これにHPV検査を組み合わせることで「がんになる可能性があるかどうか」をより早期に把握できます。

特に30歳以上の方に適した検査です。細胞診と併用することで、より確実性の高い結果が得られます。

超音波(エコー)検査

子宮や卵巣の状態をリアルタイムで確認できる検査です。子宮筋腫、子宮内膜症、卵巣のう腫などの良性疾患の早期発見にも役立ちます。「生理不順がある」「下腹部に違和感がある」「家族に婦人科系がんの既往がある」といった方には特に追加をおすすめします。

早期発見のため定期検診を

子宮がんや卵巣がんは、初期の段階では自覚症状がほとんどなく、気づいたときには進行していることも少なくありません。

しかし、特に子宮頸がんは早期に発見できれば、多くの方が完治を目指せる病気です。そのため、定期的に検診を受けることがとても重要です。

当院では、婦人科がん検診を通じて「自覚のないリスク」を早期に見つけるサポートを行っています。20歳を過ぎたら毎年1回(少なくとも2年に1回)は検診を受け、ご自身の健康と大切な未来を守りましょう。

診療時間

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