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体外受精を検討するとき、多くの方が最初に調べるのが成功率でしょう。ところが実際に調べてみると、30%、20%、10%台と、記事によって数字がまちまちで戸惑ってしまう。そんな経験をされた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
数字が食い違うのには理由があります。何を分母にして、何を成功とするかによって、まったく違う数字になるためです。採卵1回あたりで見るのか、胚移植1回あたりで見るのか。妊娠が成立した時点を成功とするのか、赤ちゃんが生まれた時点を成功とするのか。この前提が共有されていないまま数字だけが並ぶと、実態が見えなくなります。
このコラムでは、日本産科婦人科学会が公表している全国データをもとに、年齢別の成功率、数字の正しい読み方、そして成功率を左右する要因についてご説明します。タイミング法や人工授精を続けてきて次の段階を考えている方にも、判断の材料としてお役立ていただければと思います。
体外受精の成功率とは何を指すのか
まず、用語を整理しておきます。体外受精の成績を表す指標には、主に次の3つがあります。
| 指標 | 計算のしかた | 意味 |
| 妊娠率 (胚移植あたり) | 妊娠数 ÷ 胚移植の回数 | 移植した胚が着床して妊娠に至った割合 |
| 妊娠率 (採卵あたり) | 妊娠数 ÷ 採卵の回数 | 採卵から数えた場合の妊娠の割合 |
| 生産率 | 出産数 ÷ 胚移植または採卵の回数 | 実際に赤ちゃんが生まれた割合 |
一般に「成功率」として紹介される数字の多くは、胚移植1回あたりの妊娠率です。この数字が最も高く出ます。なお、体外受精と顕微授精はあわせて生殖補助医療(ART)と呼ばれ、その臨床成績は毎年、学会に報告されています。
一方、採卵を分母にすると数字は下がります。採卵しても卵子が得られない、受精しない、胚が育たないといった段階で移植に至らないケースが含まれるためです。
そして最も低くなるのが生産率です。妊娠が成立しても流産に至る場合があるため、出産まで到達した割合は妊娠率より低くなります。
読者にとって本当に意味があるのは、この生産率です。ただし、公表されている数字の多くは妊娠率ですので、どちらを見ているのかを意識する必要があります。

年齢別の成功率データ
日本産科婦人科学会が全国の登録施設から集計しているデータをもとに、年齢による傾向を整理します。
| 年齢 | 胚移植あたりの妊娠率の目安 | 生産率(出産に至る割合)の目安 |
| 30歳前後 | およそ40%前後 | およそ30%台 |
| 35歳 | およそ35%前後 | およそ25%前後 |
| 38歳 | およそ30%前後 | およそ20%前後 |
| 40歳 | およそ25%前後 | およそ10%台前半 |
| 42歳 | およそ20%前後 | およそ5%台 |
| 44歳 | およそ15%以下 | 数% |
妊娠率と生産率の差が、年齢とともに広がっていることに注目してください。30歳前後では妊娠率と生産率の差は10ポイント程度ですが、42歳では15ポイント近く開きます。これは、年齢が上がるほど流産の割合が高くなるためです。
20代から30代前半までは比較的緩やかに低下し、35歳を過ぎたあたりから傾きが変わります。そして39歳から40歳を超えるあたりで、低下のペースが目に見えて速くなります。

なぜこうした変化が起きるのかというと、卵子の質が関係しています。年齢とともに卵子の染色体が正しく分かれにくくなり、受精しても正常に育たない受精卵の割合が増えていきます。着床しない、あるいは着床しても妊娠が継続しない原因の多くは、ここにあると考えられています。
1回で妊娠する方は多くありません
ここが最も誤解されやすい点です。
胚移植1回あたりの妊娠率が30%ということは、裏を返せば7割の方は1回では妊娠に至らないということです。1回目でうまくいかなかったからといって、体外受精が向いていないわけではありません。
体外受精の成績を考えるうえで重要なのが、累積の考え方です。1回ごとの成功率は変わらなくても、回数を重ねれば、いずれかの回で妊娠する可能性は積み上がっていきます。
たとえば1回あたりの確率が30%の場合、単純計算では3回目までに妊娠される方が7割近くになります。実際の医療では条件が一定ではないため計算どおりにはなりませんが、回数を重ねることを前提に考える姿勢は現実に即しています。
このため、1回目の採卵で複数の胚を凍結保存しておくことに意味があります。移植のたびに採卵をやり直す必要がなく、体への負担も費用も抑えながら回数を重ねられるためです。
保険が適用される胚移植の回数には上限があり、40歳未満の方は1子につき6回まで、40歳以上43歳未満の方は3回までとなっています。この回数設定も、複数回を前提とした制度設計だと理解できます。なお、保険適用外となった場合も、自治体の助成金など負担を軽減できる制度があります。
成功率を左右する要因
年齢以外にも、成功率に影響する要因があります。
胚の質と発育の段階
移植する胚の状態は、成功率を大きく左右します。受精卵が5日目の胚盤胞まで育った場合、3日目の初期胚を移植するより着床率が高くなる傾向があります。胚盤胞まで到達できるかどうかは、卵子と精子の質を反映しているとも言えます。
子宮内膜の状態
着床の場となる子宮内膜が十分な厚さになっているか、着床に適した時期に移植できているかも重要です。子宮内膜が薄い場合や、子宮筋腫、子宮内膜症、子宮腺筋症といった疾患がある場合には、着床しにくくなることがあります。黄体機能不全がある場合には、ホルモンを補いながら移植のスケジュールを組みます。
新鮮胚移植か、凍結融解胚移植か
近年は、採卵した周期には移植せず、いったん全ての胚を凍結して次の周期以降に移植する方法が主流になっています。排卵誘発の影響を受けない自然な状態の子宮に戻せるため、着床率が高くなる傾向があります。
精子の状態
男性側の要因も無視できません。精子の数や運動率が低い場合には、顕微授精を選択します。近年は、精子が持つDNAの状態が受精後の発育に影響するという研究も進んでいます。
不妊の原因
卵管の詰まりが原因の場合と、卵巣機能の低下が原因の場合とでは、体外受精の成績は異なります。前者であれば体外受精で原因を迂回できますが、後者の場合は採卵できる卵子の数そのものが限られます。
生活習慣
喫煙は卵子と精子の両方に影響します。極端に痩せている場合や肥満の場合も、ホルモンのバランスを通じて成績に影響することがあります。月経が不順な方は、その背景に排卵の問題が隠れていることもありますので、妊活を始める段階で一度チェックしておくとよいでしょう。劇的な改善が期待できるわけではありませんが、できることではあります。
成功率の数字を見るときの注意点
クリニックごとに公表されている成功率を比較するとき、次の点に注意が必要です。
分母と定義を確認する
冒頭でご説明したとおり、採卵あたりか胚移植あたりか、妊娠率か生産率かで数字は大きく変わります。異なる定義の数字を並べて比べても意味がありません。
年齢構成の違いがある
若い患者さまが多い施設と、40代の方が多い施設とでは、同じ医療を提供していても全体の成功率は変わります。全年齢を平均した数字だけでは、施設の実力は測れません。年齢別に公表されているかどうかが、ひとつの判断材料になります。
治療方針の違いが数字に表れる
たとえば、条件の良い胚だけを選んで移植すれば、移植あたりの成功率は高くなります。一方、可能性のある胚は積極的に移植する方針であれば、数字は下がります。数字の高さが、そのまま患者さまにとっての良さを意味するとは限りません。
自分に当てはまる数字ではない
公表されている成功率は、多くの方を平均した数字です。ご自身の年齢、卵巣の状態、不妊の原因によって、実際の見通しは変わります。まず検査を受けたうえで、ご自身の条件に即した見通しを医師と共有することが、統計の数字を眺めるより確かな判断につながります。
茅ヶ崎・鎌倉エリアの方にも選ばれている湘南レディースクリニック
成功率の数字は、治療を選ぶうえでの目安にはなりますが、それだけで施設を決められるものではありません。実際には、通院のしやすさ、説明のわかりやすさ、相談しやすい雰囲気といった要素が、治療を続けられるかどうかを左右します。
湘南レディースクリニックは、JR・小田急藤沢駅南口から徒歩2分の藤沢本院と、JR辻堂駅北口から徒歩3分の辻堂C-X院の二院体制で診療しています。茅ヶ崎からは東海道線で辻堂が1駅、藤沢が2駅、鎌倉からは江ノ島電鉄または大船経由でアクセスいただけます。

当院は、湘南エリアで初めて体外受精を導入したクリニックです。開院から19年目を迎え、累計の妊娠件数は5,300件を超えました。年齢別の治療成績も一覧で公開しておりますので、あわせてご覧ください。
タイミング法や人工授精といった一般不妊治療から体外受精まで一貫して対応しており、流産を繰り返す不育症の診療も行っています。治療を始める前にはカウンセリングの時間を設け、想定される期間や費用をご説明しています。
卵子への負担を抑えるPiezo ICSIをはじめ、二段階胚移植やSEET法、子宮内膜のフローラ検査など、着床の可能性を高めるための選択肢もご用意しています。胚の培養や凍結保存の設備も院内に備えており、採卵から移植までを一貫して行える体制です。
数字だけを見て「自分には難しいかもしれない」と判断される前に、一度ご相談ください。早めに検査を受けていただければ、ご自身の状態に即した見通しをお伝えできます。ご不明な点は医師やスタッフへお気軽におたずねください。ご予約はお電話またはWEBから承っています。