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「体外受精」という言葉は知っていても、実際にどのような治療なのか、人工授精とは何が違うのか、費用はどれくらいかかるのかまで詳しくご存じの方は、多くないかもしれません。不妊治療のなかでも体外受精は身体的・経済的な負担が大きいイメージがあり、一歩を踏み出すまでに時間がかかる方もいらっしゃいます。
このコラムでは、体外受精の仕組みから、人工授精との違い、適応となるケース、採卵から胚移植までの流れ、妊娠率、そして保険診療と自由診療の費用までを整理してご説明します。ご自身にとって必要な治療法かどうかを見極める材料として、お役立てください。
体外受精(IVF)とはどのような治療か
体外受精は、卵巣から取り出した卵子と、精液から回収した精子を体外で受精させ、育った受精卵(胚)を子宮内に戻して着床を目指す不妊治療です。英語ではIn Vitro Fertilizationといい、頭文字をとってIVFと呼ばれます。
通常、受精は卵管の中で起こります。受精卵は細胞分裂を繰り返しながら子宮へと移動し、着床して妊娠が成立します。この一連の流れのどこかに問題がある場合に、受精と初期の発育を体の外で行い、着床の直前まで育った胚を子宮に戻すのが体外受精の考え方です。
世界で初めて体外受精児が誕生したのは1978年のことでした。以来、40年以上のあいだに技術は大きく進歩し、現在では顕微授精や胚の凍結保存とあわせて、高度生殖補助医療(ART)と総称される治療法のひとつとして確立されています。日本では、近年生まれてくる赤ちゃんのおよそ10人に1人が生殖補助医療によって誕生しており、決して特別な選択ではなくなってきています。
人工授精(AIH)との違い
体外受精を検討される方から最も多くいただくご質問が、人工授精との違いです。どちらも医療の力を借りて妊娠を目指す治療ですが、受精が起こる場所が根本的に異なります。

| 比較項目 | 人工授精(AIH) | 体外受精(IVF) |
| 受精が起こる場所 | 体内(卵管の中) | 体外(培養室の中) |
| 卵子の採取 | 行わない | 採卵が必要 |
| 精子の扱い | 洗浄・濃縮して子宮内へ注入 | 洗浄・濃縮して卵子と受精させる |
| 麻酔 | 不要 | 採卵時に静脈麻酔を使用 |
| 受精の確認 | できない | 顕微鏡で観察できる |
| 1回あたりの妊娠率の目安 | 約5〜10% | 約20〜30% |
| 通院の頻度 | 比較的少ない | 採卵周期は数日おき |
人工授精でできること、できないこと
人工授精は、精子を子宮内へ直接届けることで受精の機会を高める治療です。ただし、精子が卵管まで自力でたどり着いて卵子と出会う必要があります。そのため、卵管に閉塞がある場合や、精子の状態に大きな課題がある場合には十分な効果が期待できません。
体外受精だからわかること
体外受精は受精そのものを体の外で行うため、卵管の状態に左右されず、受精が成立したかどうかを顕微鏡で観察できます。「なぜ妊娠に至らないのか」がわからないまま治療を続けてこられた方にとって、原因を明らかにする手がかりが得られることも、体外受精の大きな意味のひとつです。
体外受精が検討される主なケース
適応となる代表的なケース
以下のような場合、体外受精が有力な選択肢となります。
・卵管に閉塞がある、または卵管を摘出している(卵管性不妊)
・精子の数が少ない、運動率が低いといった男性不妊症(乏精子症、精子運動障害など)がある
・抗精子抗体が陽性で、精子の働きが妨げられている
・子宮内膜症などにより、卵子と精子の出会いが妨げられている
・年齢に伴い卵子の数が減少しており、限られた時間の中で妊娠を目指したい
・タイミング法や人工授精を一定回数行っても妊娠に至らない
・検査をしても明らかな原因が見つからない(原因不明不妊)

必ず段階を踏まなければならないわけではありません
タイミング法から人工授精、体外受精へと順番にステップアップすることだけが正解ではありません。例えば、年齢や卵巣機能の状態、これまでの経過によっては、はじめから体外受精をご提案することもあります。反対に、体外受精の負担が大きいと感じられる場合には、治療の段階を一度下げるという選択肢もあります。
採卵から胚移植までの流れ
体外受精は月経周期に合わせて進みます。当院では以下の6つの段階で治療を実施しています。
1.排卵の抑制・調整
自然に排卵が起こってしまうと採卵ができないため、GnRHアゴニストやアンタゴニストといったホルモン製剤を用いて、排卵のタイミングを調整します。ロング法、ショート法、アンタゴニスト法などがあり、卵巣機能の状態やこれまでの治療歴に合わせて選択します。
2.排卵誘発
クロミフェンなどの内服薬やhMG注射といった排卵誘発剤を用いて、複数の卵胞の発育を促す段階です。超音波検査で卵胞の発育を観察しながら、薬の種類や投与量を調整していきます。
3.採卵と精子の準備
卵胞が十分に育ち、卵子が成熟する時期を見きわめてhCG注射を行い、その翌々日の朝に採卵します。経腟超音波で確認しながら、細い針で卵胞から卵子を取り出す処置です。静脈麻酔を使用するため痛みの心配はほとんどなく、かかる時間は卵胞の数にもよりますが10分から20分程度が目安となります。精子は採卵当日にご持参いただくか、院内で採取していただきます。
4.受精と培養
精子を卵子にふりかける媒精(自然受精)か、1個の精子を細い針で卵細胞質内に直接注入する顕微授精(ICSI)によって受精させます。採卵の翌日に受精しているかどうかを確認し、その後は培養器の中で胚の発育を観察しながら、3日目の初期胚、5日目の胚盤胞へと育てていきます。
5.胚移植
細いカテーテルを使って、胚を子宮内に戻します。日本産科婦人科学会の指針により、35歳未満の初回・2回目の移植では原則1個までとされています。処置自体は数分程度で終わり、麻酔は必要ありません。
6.余った胚の凍結保存
移植しなかった良好な胚は凍結保存し、次の周期以降に融解して移植することができます。採卵を繰り返さずに移植の機会を持てるため、身体的にも経済的にも負担の軽減につながります。
採卵周期は、月経が始まってからおよそ2週間から3週間かけて進みます。この間の通院の頻度は数日おきになるため、通いやすさは治療を続けるうえで見過ごせない条件になります。

妊娠率と、知っておきたいリスク
1回あたりの妊娠率の目安
体外受精による妊娠率は、1回あたりおよそ20〜30%とされています。1回で結果が出るとは限らず、複数回の移植を重ねる中で妊娠される方が多いのが実際のところです。また、妊娠率は年齢の影響を大きく受け、30代後半以降は緩やかに低下していきます。これは、加齢に伴って卵子の染色体に異常が生じる割合が高くなることが背景にあると考えられています。だからこそ、迷っている時間そのものが治療の条件を左右するという側面もあります。
主なリスク
体外受精を受けるうえでは、次のようなリスクや負担があることもあらかじめ知っておいていただきたい点です。
・卵巣過剰刺激症候群(OHSS)
排卵誘発剤に卵巣が過剰に反応し、卵巣の腫れやお腹に水がたまるといった症状が出ることがあります。当院では卵巣の反応を観察しながら薬剤を調整し、安全性に配慮した治療を行っています。
・多胎妊娠
複数の胚を移植した場合、双子以上の妊娠となる可能性があります。
・採卵に伴う合併症
まれに出血や感染が起こることがあります。
・精神的な負担
結果を待つ時間や、思うように進まないときの気持ちの揺れは、多くの方が経験されます。
気になる症状や不安があれば、抱え込まず担当の医師やスタッフにその都度お伝えください。
費用と保険適用について
保険が使える条件と回数の上限
2022年4月から、体外受精と顕微授精にも健康保険が適用されるようになりました。対象となるのは治療開始時に女性が43歳未満の方で、胚移植の回数には以下の上限が設けられています。
・40歳未満の方は1子ごとに胚移植6回まで
・40歳以上43歳未満の方は1子ごとに胚移植3回まで
出産すると回数はリセットされます。また、採卵の回数に制限はありません。
保険診療での自己負担の目安
保険診療では、一般の方は3割の自己負担となります。当院における主な自己負担額の目安は以下のとおりです。
| 治療内容 | 自己負担額の目安 |
| 採卵から媒精まで(2〜5個) | 33,000円 |
| 胚培養(2〜5個) | 18,000円 |
| 胚盤胞までの延長培養(2〜5個) | 6,000円 |
| 新鮮胚移植 | 25,500円 |
| 凍結胚の融解移植 | 39,000円 |
| 凍結胚の保存(2〜5個) | 21,000円 |
さらに高額療養費制度により、保険診療での月額自己負担には上限があり、所得に応じておよそ6万円または13万円となります。
保険が使えない場合の自由診療
年齢や治療回数、事実婚などの理由で保険が使えない場合は自由診療となります。当院では総額の概算で、体外受精が230,000円から550,000円、顕微授精が230,000円から605,000円です。令和4年4月に定められた保険点数に準じた設定としており、経済的な理由で治療の機会を諦めていただきたくない、という考えによるものです。

なお、参考までに、保険診療での人工授精は約10,000円となります。薬剤ごとの金額を含めた詳しい料金は、当サイトの費用一覧ページに掲載しています。
ここでご紹介した金額はいずれも目安です。実際にかかる費用は、使用する薬剤の種類や量、採卵できた卵子の数、移植の方法、お持ちの保険証や医療証の種類などによって変わります。また、診療報酬の改定にともなって金額が変更となることもあります。正確な費用については、受診される医療機関の窓口で必ずご確認ください。
当院では治療を始める前にカウンセリングの時間を設け、患者さまの状況に応じて想定される費用を具体的にご説明していますので、気になる点は遠慮なくおたずねください。
工程ごとの料金やケース別のシミュレーションは、こちらの記事にまとめています。
茅ヶ崎・鎌倉エリアの方にも選ばれている湘南レディースクリニック
藤沢駅南口から徒歩2分、茅ヶ崎・鎌倉からのアクセス
体外受精は、採卵周期に数日おきの通院が必要となる治療です。だからこそ、無理なく通える場所で治療を受けられるかどうかは、治療を続ける力にも、お気持ちの余裕にも関わってきます。
湘南レディースクリニックは、JR・小田急藤沢駅南口から徒歩2分の場所にあります。茅ヶ崎からはJR東海道線で2駅、鎌倉からは江ノ島電鉄で乗り換えなし、JRなら大船を経由して十数分と、湘南エリア全域からアクセスしやすい立地です。日曜日も体外受精と人工授精は完全予約制で対応しておりますので、平日の通院が難しい方にもご利用いただいています。
湘南エリアで初めて体外受精を実施したクリニックです
当院は、湘南エリアで初めて体外受精を導入したクリニックです。開院から19年目を迎え、累計の妊娠件数は5,300件を超えました。年齢別の治療成績も公開しておりますので、あわせてご覧ください。卵子への負担を抑えるPiezo ICSIをはじめ、二段階胚移植やSEET法、子宮内膜のフローラ検査など、着床の可能性を高めるための選択肢もご用意しています。
また、当院は生殖免疫や不育症に関する研究の蓄積をもとに、流産を繰り返す不育症の診療にも対応しています。体外受精と並行してご相談いただくことも可能です。
不妊治療だけを扱うクリニックではありません
婦人科や産科の患者さまも来院される明るくオープンな雰囲気ですので、受診の目的が周囲に推測されることはありません。妊婦健診の時間帯を平日の10時から16時に限定しているため、ご希望に応じて時間をずらして受診いただくことも可能です。
他院からの転院を検討されている方は、こちらの記事もあわせてご覧ください。
藤沢・茅ヶ崎・鎌倉で産婦人科をお探しの方に、安心して治療を受けていただける環境を提供してまいります。体外受精を具体的に検討されている方も、「まだ決めきれていない」という方も、まずは一度ご相談ください。検査の結果をもとに、患者さまお一人おひとりに合った進め方を一緒に考えてまいります。