今回は診療の中で日々感じていることを記してみます。
私は今年、医師生活30年を迎えました。もうすっかりベテランの域です。
不妊治療を始めたのは、3年目からですので27年間の経験です。
機器や製剤なども不十分な時代から、今では受精卵の遺伝子を判別できるまでになり、技術の進歩を感じます。
例えば体外受精での妊娠率では、100人に一人くらいしか妊娠できない時代から始めてますが、先日は妊娠判定6名を行い全員が陽性、のようなことも普通にあります。
ただ、そのうちのひとりの方はその後数値が上がらず継続しない結果になってしまいました。
そこで感じるのは、妊娠しないことが仕方ないと思われた30年ほど前も、妊娠することへの期待値が上がった現在でも、患者さんの気持ちは大きくは変わらないのだと。
治療を受ける人はいつも成功を信じている。
当事者として妊娠すれば嬉しいし、しなければ悲しい。
どれだけ技術が進んでも、全ての人に成功を齎せないもどかしさはあります。
患者さん一人ひとりの思いを想像して日々の診療に全力を注いでいます。