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体外受精を検討するとき、真っ先に知りたくなるのが費用でしょう。ただ、調べてみても「30万円から60万円」といった幅のある数字が並ぶばかりで、自分の場合はいくらになるのかが見えてこない。そう感じている方は多いのではないでしょうか。
金額に幅が出るのには理由があります。体外受精(IVF)は採卵、培養、移植、凍結保存といった工程ごとに料金が決まっており、しかも採卵できた卵子や育った胚の個数によって金額が変わるためです。同じ体外受精でも、進み方によって総額は変わります。
2022年4月に保険が適用されて以降、患者さまの負担は大きく下がりました。ただし、その分だけ料金の仕組みは細かくなっています。
このコラムでは、費用が何によって決まるのかを整理したうえで、保険診療の料金内訳、ケース別のシミュレーション、先進医療を併用した場合、自由診療になる場合までをご説明します。
体外受精の費用は何で決まるのか
体外受精の費用は、大きく3つの要素で決まります。

1.どの工程まで進んだか
体外受精は、採卵、受精、培養、胚移植、凍結保存という工程で構成されています。それぞれに料金が設定されており、進んだ分だけ費用が発生します。
たとえば、採卵したものの卵子が採れなかった場合と、受精卵が胚盤胞まで育って移植に至った場合とでは、当然かかる費用が異なります。
2.卵子や胚の個数
ここが見落とされやすい点です。保険診療では、採卵術、顕微授精、胚培養、胚の凍結保存のいずれも、個数に応じて金額が段階的に上がる仕組みになっています。
具体的には、1個の場合、2個から5個の場合、6個から9個の場合、10個以上の場合という区分が設けられています。どの区分に該当するかは、卵巣の反応によって決まります。採卵で多くの卵子が得られれば、その分の費用は増えますが、一度の採卵で複数の胚を確保できれば、次の周期は移植だけで済むという利点もあります。
3.受精の方法と、追加する技術
通常の体外受精(媒精)と顕微授精(ICSI)では料金が異なります。また、着床を助けるアシステッドハッチングや、高濃度ヒアルロン酸含有培養液を使用する場合などは、加算として費用が加わります。
なお、体外受精と顕微授精はあわせて高度生殖補助医療(ART)と呼ばれ、実施できる施設が限られる治療です。
保険診療での料金内訳
当院における保険診療での自己負担額の目安は次のとおりです。いずれも3割負担の場合で、卵子や胚が2個から5個のケースを示しています。
| 治療内容 | 自己負担額の目安 |
| 採卵から媒精まで(2〜5個) | 33,000円 |
| 胚培養(2〜5個) | 18,000円 |
| 胚盤胞までの延長培養(2〜5個) | 6,000円 |
| 新鮮胚移植 | 25,500円 |
| 凍結胚の融解移植 | 39,000円 |
| 凍結胚の保存(2〜5個) | 21,000円 |

上記に加えて、診察料、超音波検査、ホルモン値を調べる血液検査、排卵誘発に使う内服薬や注射の薬剤費、採卵時の麻酔料などが別途かかります。移植の周期に子宮内膜を整えるホルモン補充を行う場合は、その薬剤費も加わります。
また、凍結した胚を翌年以降も保管する場合は、年ごとに保存の管理料が必要になります。
個数が2個から5個の範囲を外れる場合は、それぞれの区分に応じた金額となります。実際にどの区分に当てはまるかは採卵してみないとわかりませんので、目安としてご覧いただき、正確な金額は診察の際にご確認ください。
男性側にかかる費用
体外受精では、採卵の日に精液を採取していただきます。精子を洗浄・濃縮する調整の費用は、体外受精の料金に含まれます。
精液中に精子が見当たらない無精子症の場合には、精巣から直接精子を採取する手術(TESE)が必要になることがあります。この手術も保険適用の対象ですが、実施できる施設は限られます。当院で対応が難しい場合は、連携する医療機関をご紹介いたします。
ケース別・費用シミュレーション
進み方によって費用がどう変わるのか、3つのケースで見てみます。
※いずれも卵子や胚が2個から5個の場合で、診察料や薬剤費などは含みません。

ケースA 採卵した周期にそのまま移植する
| 工程 | 金額 |
| 採卵から媒精まで | 33,000円 |
| 胚培養 | 18,000円 |
| 新鮮胚移植 | 25,500円 |
| 合計 | 76,500円 |
採卵した周期にそのまま胚を戻す方法です。1周期で完結するため、期間も費用も抑えられます。ただし、排卵誘発の影響で子宮内膜の状態が整いにくいこともあり、この方法を選択できるかどうかは医師が判断します。
ケースB 全胚凍結して、翌周期以降に移植する
採卵の周期
| 工程 | 金額 |
| 採卵から媒精まで | 33,000円 |
| 胚培養 | 18,000円 |
| 胚盤胞までの延長培養 | 6,000円 |
| 凍結胚の保存 | 21,000円 |
| 小計 | 78,000円 |
移植の周期
| 工程 | 金額 |
| 凍結胚の融解移植 | 39,000円 |
| 小計 | 39,000円 |
2周期の合計は117,000円です。採卵と移植を別の周期に分けることで、体を整えてから移植できます。現在はこの進め方が主流です。
なお、費用が2つの月に分かれるという点も見逃せません。高額療養費制度は月ごとに計算されるため、同じ月にまとめるか分けるかで、最終的な負担が変わることがあります。
ケースC 凍結胚が複数あり、2回目の移植を行う
| 工程 | 金額 |
| 凍結胚の融解移植 | 39,000円 |
1回目の採卵で複数の胚を凍結できていれば、2回目以降は移植の費用だけで済みます。採卵をやり直す必要がないため、体への負担も費用も大きく軽減されます。
これが、一度の採卵で複数の胚を確保しておく意味です。
先進医療を併用する場合
先進医療とは、保険適用にはなっていないものの、保険診療との併用が認められている技術のことです。通常、保険適用外の治療を併用すると全体が自由診療になりますが、先進医療であれば保険部分は保険のまま進められます。
体外受精で用いられる主な先進医療には、次のようなものがあります。
| 技術名 | 内容 |
| タイムラプス撮像法による胚培養 | 培養器から出さずに胚の成長を連続撮影して観察する |
| 子宮内膜刺激胚移植法(SEET法) | 培養液を先に子宮に注入し、着床しやすい環境を整える |
| 二段階胚移植法 | 初期胚と胚盤胞を時期をずらして移植する |
| 子宮内細菌叢検査(EMMA・ALICE) | 子宮内の細菌のバランスを調べる |
| 子宮内膜受容能検査(ERA) | 着床に適した時期を調べる |
| 着床前胚異数性検査(PGT-A) | 胚の染色体の数を調べる |
費用は技術によって異なり、1回あたり数万円から十数万円程度が目安です。どの技術が先進医療として認められているかは厚生労働省のホームページに一覧が掲載されており、内容は随時更新されます。
なお、先進医療の費用については多くの自治体が助成を行っています。藤沢市と鎌倉市では、いずれも先進医療にかかった費用の7割、上限5万円が助成されます。申請期限や必要書類は自治体によって異なりますので、お住まいの市のホームページでご確認ください。
自由診療になる場合の費用
次のような場合は保険が使えず、自費での自由診療となります。年齢制限や回数制限に該当するケースです。
・治療開始時に女性が43歳以上である
・保険で認められた胚移植の回数を超えている(40歳未満は6回、40歳以上43歳未満は3回)
・先進医療以外の保険適用外の技術を併用する
当院の自由診療の費用は、総額の概算で体外受精が230,000円から550,000円、顕微授精が230,000円から605,000円です。令和4年4月に定められた保険点数に準じた設定としており、経済的な理由で治療の機会を諦めていただきたくない、という考えによるものです。
自由診療でも金額に幅があるのは、保険診療と同じく採卵できた卵子の数や進んだ工程によって変わるためです。各項目の詳細な料金は、当サイトの費用一覧ページに記載しています。
なお、自由診療は高額療養費制度の対象外となります。医療費控除は対象になります。
負担を軽くする制度
保険適用に加えて、次の制度が利用できます。
高額療養費制度
同じ月の保険診療の自己負担額が上限を超えた場合、超えた分が払い戻されます。上限は所得によって異なり、一般的な所得の方でおよそ6万円から13万円程度です。事前に限度額適用認定証を取得しておくと、窓口での支払い自体を上限までに抑えられます。
医療費控除
1年間に世帯で支払った医療費が10万円を超えた場合、確定申告で税金の一部が戻ってきます。保険診療分も自由診療分も対象で、通院の交通費も含められます。
自治体の助成
先進医療にかかった費用に対する助成です。申請の手続きには医療機関が作成する書類が必要になりますので、当院の受付にお申し付けください。
費用についてよくいただくご質問
Q. 支払いはいつ、どのように行いますか
治療の進行に合わせて、その都度お支払いいただく形が基本です。採卵の周期であれば採卵後に、移植の周期であれば移植後にご精算いただきます。支払い方法については受付にてご案内いたします。
Q. 採卵したものの、卵子が採れなかった場合はどうなりますか
採卵術を実施した分の費用はかかりますが、その後の受精や培養に進んでいなければ、そこから先の費用は発生しません。工程ごとに料金が決まっているためです。
Q. 凍結した胚を保管し続ける費用はかかりますか
1年ごとに保存の管理料が必要になります。更新の時期が近づきましたらご案内いたします。
Q. 人工授精から体外受精に進む場合、費用はどう変わりますか
人工授精は保険診療で約10,000円ですので、体外受精に進むと1桁上がることになります。ただし、体外受精は妊娠率も大きく異なります。どの段階で切り替えるかは、年齢やこれまでの経過をもとに医師とご相談ください。
Q. 途中で治療を中断した場合、費用はどうなりますか
実施した工程までの費用をお支払いいただきます。周期の途中で卵胞が育たず採卵に至らなかった場合なども、それまでにかかった診察料や薬剤費が対象となります。
茅ヶ崎・鎌倉エリアの方にも選ばれている湘南レディースクリニック
費用の見通しが立たないまま治療を始めると、「あとどれくらいかかるのか」という不安が積み重なっていきます。工程ごとに何にいくらかかるのかを把握しておけば、判断の材料が増え、落ち着いて治療に向き合えます。
湘南レディースクリニックは、JR・小田急藤沢駅南口から徒歩2分の藤沢本院と、JR辻堂駅北口から徒歩3分の辻堂C-X院の二院体制で診療しています。茅ヶ崎からは東海道線で辻堂が1駅、藤沢が2駅、鎌倉からは江ノ島電鉄または大船経由でアクセスいただけます。

当院は、湘南エリアで初めて体外受精を導入した不妊治療クリニックです。開院から19年目を迎え、累計の妊娠件数は5,300件を超えました。治療を始める前にカウンセリングの時間を設け、想定される費用を具体的にご説明しています。
タイミング法や人工授精といった一般不妊治療から体外受精まで一貫して対応しており、婦人科の診療や、流産を繰り返す不育症にも対応しています。
自由診療となる場合も保険点数に準じた金額を設定しており、年齢や回数の制限を超えた方にも、無理のない範囲で治療を続けていただける体制を整えています。助成金の申請に必要な書類の作成にも対応しています。
体外受精の具体的な流れについては、こちらの記事で詳しくご説明しています。
費用のことが気がかりで迷っている方も、まずはご相談ください。初診の際にご不明な点があれば、医師やスタッフへお気軽におたずねください。ご予約はお電話またはWEBから承っています。