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顕微授精(ICSI)とは?体外受精との違いと適応、妊娠率を解説

不妊治療を進めるなかで、「顕微授精をご提案します」と言われて戸惑われる方は少なくありません。体外受精とは何が違うのか、なぜ自分に必要なのか、リスクはないのか。疑問が一度に押し寄せる場面かと思います。

顕微授精は、1個の精子を選び、細い針で卵子の中へ直接注入して受精させる方法です。体外受精で受精が起こらない場合や、精子の数や運動性に課題がある場合に用いられます。

このコラムでは、顕微授精の仕組み、体外受精との違い、どのような場合に選択されるのか、受精率と妊娠率、そしてリスクまでをご説明します。

目次

1.顕微授精(ICSI)とは

2.体外受精との違い

3.顕微授精が選択されるケース

4.顕微授精の流れ

5.受精率と妊娠率

6.顕微授精の技術と進歩

7.リスクと知っておきたいこと

8.顕微授精についてよくいただくご質問

9.茅ヶ崎・鎌倉エリアの方にも選ばれている湘南レディースクリニック

顕微授精(ICSI)とは

顕微授精は、顕微鏡で観察しながら1個の精子を細いガラス製のピペットで吸引し、卵子の細胞質内へ直接注入して受精させる方法です。

英語ではIntracytoplasmic Sperm Injectionといい、頭文字をとってICSI(イクシー)と呼ばれます。日本語では卵細胞質内精子注入法と表記されることもあります。

1992年にベルギーで最初の成功例が報告され、それ以降、男性側に原因がある不妊症の治療を大きく変えた技術です。それまでは受精させること自体が難しかった症例でも、妊娠を目指せるようになりました。

現在、日本で行われている高度生殖補助医療(ART)のうち、およそ半数以上が顕微授精によるものです。日本産科婦人科学会の集計でもその割合は年々増えており、決して特殊な治療ではなくなっています。

体外受精との違い

体外受精と顕微授精は、どちらも体外で卵子と精子を受精させる治療です。違いは、受精のさせ方にあります。

比較項目体外受精(媒精)顕微授精(ICSI)
受精のさせ方培養液の中で卵子に多数の精子をふりかけ、自然な受精を待つ1個の精子を選んで卵子に直接注入する
必要な精子の数1個の卵子に対して数万から10万個程度1個の卵子に対して1個
精子の運動性自力で卵子に到達する必要がある動きが悪くても選別できる
受精率の目安およそ60から70%およそ70から80%
費用顕微授精より低い技術料が加わる分だけ高い

体外受精では、精子が自力で卵子を包む透明帯を通り抜け、細胞膜と融合する必要があります。この過程には、十分な数と運動性が求められます。

顕微授精では、その過程をすべて人の手で代行します。精子が1個でも見つかれば受精を試みられるということです。

なお、採卵から受精卵の培養、胚移植までの流れは、体外受精と顕微授精で変わりません。異なるのは受精の工程だけです。排卵誘発で卵巣を刺激し、卵胞を育ててから採卵するところまでは同じ進め方です。

顕微授精が選択されるケース

顕微授精は、次のような場合に適応となります。

男性側に原因がある場合

■乏精子症
精液中の精子の数が少ない状態です。数が極端に少ない場合、体外受精では受精に必要な精子数を確保できません。

■精子無力症
精子の運動性が低い状態です。自力で卵子まで到達し、透明帯を通り抜けることが難しくなります。まったく動きが見られない不動精子しか得られない場合もあります。

■奇形精子症
正常な形態の精子の割合が低い状態です。受精する力が下がっていると考えられています。

■無精子症
精液中に精子が見当たらない状態です。精巣内に精子が存在する場合には、手術で精巣から直接精子を採取し、顕微授精に用います。

女性側の要因や、これまでの経過による場合

■抗精子抗体が陽性
精子の動きを妨げる抗体を持っている場合、精子が卵子に到達しにくくなります。

■体外受精で受精しなかった
前回の体外受精で受精が起こらなかった、または受精した卵子が極端に少なかった場合、次の周期で顕微授精に切り替えます。これを受精障害といいます。

■採れた卵子の数が少ない
卵子が1個か2個しか採れない場合、確実に受精させるために顕微授精を選択することがあります。

■卵子の状態や年齢を考慮する場合
年齢が高く、卵子の質の低下が考えられる場合には、受精の確率を上げるために顕微授精を用いることがあります。

どの方法を選ぶかは、精液検査の結果とこれまでの経過をふまえ、医師が判断します。採卵当日の精子の状態をチェックし、その場で決定することもあります。タイミング法や人工授精を経ずに、検査の段階で顕微授精をご提案することもあります。

顕微授精の流れ

顕微授精は、採卵と胚移植のあいだにある工程です。全体の流れの中で位置づけると次のようになります。

段階内容
1.排卵誘発薬で複数の卵胞を育てる
2.採卵卵胞から卵子を取り出す
3.精子の採取と調整精液を採取し、洗浄・濃縮して良好な精子を選別
4.顕微授精精子1個を卵子に注入する
5.培養受精を確認し、胚を育てる
6.胚移植育った胚を子宮に戻す

このうち、4の工程を詳しくご説明します。

■卵子の準備
採取した卵子から、周囲の細胞を取り除きます。このとき、卵子が成熟しているかどうかを確認します。未成熟の卵子には顕微授精を行えません。採卵から顕微授精までの時間は限られており、卵子の状態が良いうちに実施します。

■精子の選別
顕微鏡で観察し、形態と運動性の良い精子を1個選びます。この選別が受精と発育に影響するため、慎重に行われます。

■注入
卵子を固定し、選んだ精子を細いピペットで吸引して、卵子の細胞質内へ注入します。この作業は胚培養士が行います。

■受精の確認
翌日、受精が正常に起こったかを顕微鏡で確認します。その後は体外受精と同じく、3日目の初期胚、5日目の胚盤胞へと培養を進めます。

受精率と妊娠率

顕微授精の受精率は、一般におよそ70から80%とされています。体外受精の60から70%と比べると高い数字です。

ただし、ここで注意していただきたいことがあります。

受精率が高いことと、妊娠率が高いことは別です

顕微授精は受精の工程を確実にする技術であって、その後の胚の発育や着床を保証するものではありません。実際、胚移植1回あたりの妊娠率は、体外受精と顕微授精で大きな差はないとされています。

妊娠率を左右するのは、年齢と卵子の質です。顕微授精を選んだからといって妊娠率が上がるわけではなく、体外受精では受精できなかったケースを受精まで到達させる、というのが正確な理解です。

受精しないこともあります

顕微授精を行っても、受精が起こらないことがあります。卵子の活性化がうまくいかない場合などです。頻度は高くありませんが、ゼロではありません。そのため、1回の結果だけで判断せず、次の周期で方法を変えて臨むこともあります。

この場合、次の周期でカルシウムイオノフォアなどを用いた卵子活性化処理を組み合わせることがあります。

顕微授精の技術と進歩

顕微授精の技術は、この30年で改良が重ねられてきました。当院で用いている技術を中心にご紹介します。

Piezo ICSI(ピエゾイクシー)

従来の顕微授精では、先端の尖ったピペットを刺し、吸引によって卵子の膜を破って精子を注入していました。この操作は卵子に負担をかけ、変性につながることがありました。

Piezo ICSIは、先端が平らなピペットを微細な振動によって前進させ、卵子の膜に穴を開ける方法です。卵子へのダメージが小さく、変性率の低下と受精率の向上が報告されています。特に、膜が弱い卵子や年齢の高い方の卵子で有効とされています。

PICSI(ピクシー)

ヒアルロン酸に結合する性質を利用して、成熟した精子を選別する方法です。成熟した精子はヒアルロン酸に結合しやすく、DNAの損傷が少ない傾向があるとされています。臨床の場で先進医療として認められている技術です。

IMSI(イムジー)

通常より高い倍率の顕微鏡で精子を観察し、形態の良い精子を選別する方法です。こちらも先進医療にあたります。

なお、これらの技術を用いれば必ず結果が出るというものではありません。どの技術が有効かは、精子や卵子の状態によって変わります。

リスクと知っておきたいこと

顕微授精について、多くの方が気にされるのが安全性です。現時点でわかっていることを整理します。

卵子への影響

針を刺す操作である以上、卵子が変性してしまうことがあります。頻度は数%程度とされ、Piezo ICSIなどの技術によって低減が図られています。極めてまれではありますが、注入の位置や卵子の状態によって変性が起こることは避けられません。

生まれてくる赤ちゃんへの影響

顕微授精で生まれた子どもの先天異常の頻度について、自然妊娠と比べてわずかに高いという報告があります。

ただし、この差が顕微授精という技術によるものか、それとも顕微授精を必要とした背景、つまり男性不妊の原因となっている遺伝的な要因や親の年齢によるものかを区別することは難しく、結論は出ていません。

なお、重度の男性不妊のなかには、Y染色体の一部の欠失など、遺伝子に原因がある場合があります。この場合、男児に同じ状態が引き継がれる可能性があります。該当が疑われる場合には、事前にご説明します。

発育や知能の発達については、自然妊娠で生まれた子どもと差がないとする研究が多く報告されています。

多胎妊娠や流産

これらは顕微授精に固有のリスクではなく、体外受精と共通です。移植する胚を原則1個とすることで、多胎妊娠の発生は抑えられています。流産を繰り返す場合には、不育症の検査を追加することもあります。

顕微授精についてよくいただくご質問

Q. 顕微授精の費用はどのくらいですか

保険診療の対象です。体外受精の費用に顕微授精の技術料が加わる形になり、卵子の個数によって金額が変わります。詳しくは初診の際や診察の場でご案内いたします。

Q. 顕微授精は自分で選べますか

ご希望をお伝えいただくことは可能です。ただし、適応があるかどうかは検査の結果によって判断します。体外受精で十分に受精が期待できる場合、あえて顕微授精を選ぶ必要はありません。

Q. 体外受精と顕微授精を同時に行うことはできますか

採れた卵子を分けて、一部を体外受精、一部を顕微授精にすることがあります。スプリット法と呼ばれ、受精障害の有無を確認したい場合などに用いられます。

Q. 精子は誰が選ぶのですか

専門の訓練を受けた胚培養士が顕微鏡で観察し、形態と運動性をもとに選別します。動きが悪いものや形態の良くないものは避け、慎重に判断します。

Q. 顕微授精だと男の子が生まれやすいと聞きました

そのような事実は確認されていません。精子の選別は形態と運動性をもとに行われ、性別を決める染色体の違いを見分けることはできません。

茅ヶ崎・鎌倉エリアの方にも選ばれている湘南レディースクリニック

顕微授精は、胚培養士の技術と培養室の設備が結果に直結する治療です。だからこそ、どの施設で受けるかを検討する意味があります。

湘南レディースクリニックは、JR・小田急藤沢駅南口から徒歩2分の藤沢本院と、JR辻堂駅北口から徒歩3分の辻堂C-X院の二院体制で診療しています。茅ヶ崎からは東海道線で辻堂が1駅、藤沢が2駅、鎌倉からは江ノ島電鉄または大船経由でアクセスいただけます。

当院は、湘南エリアで初めて体外受精を導入した施設です。開院から19年目を迎え、累計の妊娠件数は5,300件を超えました。年齢別の治療成績も一覧で公開しております。不妊治療のほか、産科や婦人科の各種診療にも対応しています。

顕微授精では、卵子への負担を抑えるPiezo ICSIを導入しています。あわせて、成熟した精子を選別するPICSI、着床の可能性を高める二段階胚移植やSEET法、子宮内の細菌のバランスを調べるフローラ検査などもご用意しています。胚の培養や凍結保存の設備も院内に備えており、採卵から受精、培養、移植までを一貫して行える体制です。

はじめて顕微授精をご提案された方も、これから検査を受ける段階の方も、まずはご相談ください。なぜその方法が必要なのかを具体的にご説明したうえで、納得して進めていただけるようにいたします。ご予約はお電話またはWEBから承っています。

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